第58章 爆発する音
1時間もしないうちにそれぞれの保護者が酔いどれたちを引き取り、宇髄先輩もようやく肩の荷が降りたようだった。
最後に残った実弥が真っ赤になって部屋の隅っこに座り込んでいるのを先輩はニヤニヤとわらっていた。
「そう照れんな。奥さんの胸でグウスカ寝てたとか、口が裂けても言いふらさないからよ。」
「うるせえ!!!!!」
先輩はクスクスと笑っている。私は思わずサッと胸元を腕で覆った。
……そう。
実弥が倒れ込んだのを胸で受け止めたはいいものの、まさかのそのまま二度寝。動かすこともできず、実弥は眠り続けたのだ。
宇髄先輩がそれを見てゲラゲラ笑い、私は涙目でおろおろするという悲惨な状況が出来上がった。
他の人が来るまで寝室を貸してもらい、実弥が起きるまで待っていた…のだが。ちょっとでも離れようとすると意識がないのに唸って怒るので、一応そのままの体制でいたのだ。
「まぁ、酔いが冷めたなら帰りなよ。家までタクシー呼ぶからさ。」
「……お前は?」
「んー…と、実弥が落ち着いたら帰るよ。」
「寝て起きて落ち着いた。帰るぞ。」
「暴論だね!?そんな青い顔してよく言えたね!?」
実弥がぐっと肩を掴んで引き寄せてくるので無理に振り払うこともできず、はあ、とため息をついた。
いや、帰るつもりでいたけど…こんなに酔っ払ってるならまともに話せないんじゃないかって思うんだよね。
実弥が帰るって言ってくれてるし、ここは帰ったほうがいいかな…。
「…これ以上、宇髄先輩にネタを提供する前に帰った方がいいかもしれない。」
「あぁ?宇髄がなんだってんだよ。」
いや目の前でゲラゲラ笑ってますけど。え、見えてないの???ていうかなんで怒ってんの???やっぱまだお酒抜けてないじゃん!!!
「はいはい、じゃあ帰りますよ〜。いいのね?私帰っていいのね。お酒抜けた後に怒ったりしない?」
「帰るゥ……」
「はいはいはいはい」
ぎゅうううと抱きついてくるので、たまらず背中をさすった。ああ、これもう宇髄先輩見えてないな。二人の時のノリとテンションじゃん。
先輩は腹を抱えて笑っているけれども、動画撮影をしていないだけまだ慈悲はあるのだろう。
実弥の黒歴史がこれ以上更新される前に宇髄先輩に連れ添ってもらって呼んだタクシーに二人で乗り込んだ。