第58章 爆発する音
昨日、実弥が職場復帰したということで飲みに行ったらしい。
久しぶりの酒の席ということもあり、大いに盛り上がった。飲め飲めのどんちゃん騒ぎで、その流れで二次会へ。そして三次会、挙げ句の果てに宇髄先輩宅で飲み明かし……。
流石に飲みすぎた、と自覚した頃には全員二日酔いの朝を迎えたらしく、気絶するように倒れたとのこと。
ちなみに宇髄先輩は酒にめちゃめちゃ強いので無事だったらしい。
「……うっ…その場面を想像しただけで吐き気が…ていうか酒臭い…!!!」
「一応、引き取ってくれるような人に電話かけたんだけどよ…お前が一番先に来たんだ。」
宇髄先輩の顔に疲れが見えた。
朝まで飲み明かしたんだから当然か。ていうかなんでこの人は平気なんだよおかしいだろ。
「不死川く〜ん、起きてくださ〜い」
「いやお前も不死川だろうが」
ゆさゆさと揺すると呻き声が聞こえるだけでろくな返事がなかった。…ここまで泥酔するのも珍しいっていうか、初めてっていうか。
「うヴ…」
「帰るよ、帰るよ。宇髄先輩が困ってるんだから。」
「ぃやだ……」
「ふざけんな帰れ」
今にも殴りかかりそうな宇髄先輩をなだめる。もうこうなるまで止めなかったこの人も悪いんじゃないかって思ってきた。
「とりあえず立って……」
「……」
「ん?」
「…家……いねェし…」
拗ねたような声が聞こえて、思わず宇髄先輩と顔を見合わせた。
「……ここにいんぞ〜」
宇髄先輩が私の手をつかみ、人形のようにひらひらと動かした。……うっとうしいのでもうツッコミません。
「………」
「お〜い、いるぞ〜。お前の嫁さんここにいるぞ〜。」
「……ぞ〜…」
適当に相打ちを入れていると、少しピリッとした怖い気配を感じた。直後、私の手をつかむ宇髄先輩の腕に実弥の手が伸びた。
床に寝転んでいたはずの実弥は起き上がり、ギチギチと音がなるほど宇髄先輩の手を握りしめていた。…こんな酔いどれのどこにそんな力があるのか、というくらい。
「触ってんじゃねェ」
再び私と先輩で顔を見合わせた。
「さ、さね」
まさか起きたのかと思ったが、ぐらり、と実弥の体が傾いた。そしてポスッと手応えのない音がして、私の胸元に頭から倒れ込んだのだった。