第58章 爆発する音
チッ。こちとら考え事が多いんだよ。意味のわからない話をしないでくれ。
『お前また家出したんだって?不死川が仕事復帰したから何事かと思ってみんなで問い詰めたらブチ切れながら教えてくれたよ。あっ。待ってお前も不死川か。なあ本当になんて呼んだらいい?』
「ああ、仕事復帰したんですかヨカッタデスネ」
『あれ、無視?俺の言葉聞こえてない感じ?』
いくら尊敬する先輩とはいえ、今ふざけられるとムカつく。……って、向こうには私の都合なんて関係ないし……。
「……それで、実弥がどうかしたんですか?」
『よくぞ聞いてくれた。昨日、気分転換にと思って飲みに誘ったんだよ。俺とサシ飲みだったんだが……。不死川の野郎、めちゃめちゃ飲んだんだよ…。』
「はあ。」
『お前が妊娠してから禁酒してたんだと。』
え、そうなの?
…もともと家でガブガブ飲む人じゃなかったけど。確かに、家の冷蔵庫にもお酒はなかった。
………私が飲めないから、気を遣ってくれたんだな。申し訳ない。
『それで寝潰れて俺の家にいるんだよ。おまけに二日酔いで一歩も動かねえ。』
「……そうですか。」
『いや、そうですか、じゃなくてお前の旦那だろ?喧嘩中か知らないけど迎えに来いよ。』
「……旦那」
私はもぞもぞと布団から起き上がった。
痛い…お腹が痛い。
『は?お前ら、そんなやばい喧嘩してんのかよ。』
「いや、私が拗ねてるだけ…」
『それなら早く迎えに来いって。このままだと今日もこいつ泊まって行くだろ。』
「……わっかりましたあぁ…」
……うん。
まあ、仲直りの時期かもしれない。そろそろいいタイミングかな。
勝手に出て行っておいて、タイミングとかどうとか私が言えることじゃないけど。
「必ず今日中には行きます。でもすぐには行けません。あと、実弥に私が迎えに行ってもいいか聞いておいてくれませんか?」
『は?何で』
「私じゃ嫌だって言うかもしれないじゃないですか。」
『言うわけねえだろ。いいからなるべく早く来いよ。』
そこでブツッと一方的に電話が切られた。
きっちり10分後に無一郎くんが戻ってきて、私は事情を説明した。