第58章 爆発する音
無一郎くんがパンっと勢いよく手を叩いた。
その音に驚いて背筋が伸びた。
「そんなものじゃないです」
「え」
「師範のドレス姿が“そんなもの”なわけないです!!!」
え?
待って本当になんの話??
「あの」
「絶対世界一美しいですよ!綺麗です!!僕は見たいですよ!!!」
「はあ」
……ドレスゥ〜???
真っ白の…ひらひらした?
あれを?私が?
「……スーツじゃダメ?」
「ダメです!!!」
「……何がそんなにいいのかなぁ…」
私は味のしない食事を続けた。
食欲がないのに無理やり詰め込み、食べ終わり頃には頭痛までした。
「ちょっと具合が悪いから寝るね…遊びに行きたいなら行っておいで。」
「ううん、僕もここにいます。」
「………そう。」
無一郎くんが部屋の中にいると私は眠れない。
…横になるだけで治るだろうか。
「師範、大丈夫ですか?」
「うん…よくあることだから平気。」
「いや、そうじゃなくて…病院行った方がいいんじゃないですか。」
「…病院は気が休まらないの」
私は部屋にあったクッションを敷いて畳の上に寝転んだ。
無一郎くんは心配してそばにいてくれた。
「……うぅ」
思わず呻き声がもれた。
……考えることが多すぎる。
そんな中、私のスマホが久しぶりに鳴った。ディスプレイを見ると実弥の文字が。
……。
(おおぉ、このタイミングで連絡が来るか…!!)
私はスマホを掴んで、そばに座り込んでいる無一郎くんに言った。
「あの、ちょっとお庭でも歩いててもらっていい?」
「…わかりました。10分で戻りますね。」
渋々、というように無一郎くんが部屋から出て行った。
そして私はスマホの画面に目を落とした。
……連絡を無視していたのは私なんだから、ちゃんと謝らないと。
『お前今どこだよ〜〜!』
「……宇髄先輩?」
聞こえてきた声に私は拍子抜けした。
え?確かに、実弥の番号なのになんで宇髄先輩??
『不死川が二日酔いで大変なんだよ』
「…フツカヨイ?」
『おい、まさか日本語忘れてねえよな?』
「I can't understand what you say.」
『待て、頼むお願い切らないで』
その必死そうな声に電話を切ることができなかった。