第58章 爆発する音
次の日は二人とも大寝坊で、お昼前に起きた。
よほど疲れていたのだろう。二人で大笑いした。
支度を終えた頃にはもうお昼ご飯で、用意してもらったものをもぐもぐと食べた。
「そういえば、師範の指にあるのって婚約指輪ですか?」
「?あ、うん。もらったやつ。私もちゃんとお返ししたよ〜。」
「お返し?」
そうそう。緑色が入った、実弥らしいものを選んだつもりだった。
「え?なんでですか?」
「結婚には、お互いに指輪がいるんでしょ?」
「いや、それは結婚指輪じゃないですか?」
「?」
私が首を傾げると、無一郎くんはギョッとしていた。
「師範、婚約指輪と結婚指輪は違うんですよ!?」
「??…?」
「もう、師範のお母さんとお父さんも指輪つけてたでしょう!?」
「ええ〜………」
つけてたっけ?
全然記憶にない。親の手なんて見たことがないわ。だってチラ見しただけでビンタしてくるような人たちだよ???
「でもそんなこと言われるとつけてた気がする。あれ?つけてなかった?つけてたかも??」
「どうして自分の親のこと覚えてないんですか…」
はいごもっともでございます。
…まあ、親のことを今言ってもこじれるだけだし…言わないけどさ。
「ああ〜そうか、いらなかったのか……。ってかそれなら何で実弥は受け取った?つっこんでくれれば良かったのに。」
「単なるプレゼントだと思ったんじゃないですか?」
「…そういうことか〜………」
ううん、何だかとんでもない失敗をやらかしたようだ。
「え、ていうかまだその段階の話にもいってないんですか?不死川さん、なんのために仕事休んでるんですか?」
「おっしゃる通りで……」
「…指輪買ってないってことは、やっぱり結婚式やらないってこと?僕、師範のドレス姿見たいのに?」
「ああ…なんか実弥もそんなこと言ってたような。でもそんなもの見たって何にもならないし、別にいらないよ。私たちで決めたことだし。」
……。
急に食欲がなくなってきたな。