第57章 ルピナス
付き合いは…圧倒的に実弥の方が長いのに、何でか未だにぶつかり合う。
まあ原因はほとんど私なんだが。
「私は嫌なことがあったら一人でどうにかしたいって思うんだ。でも実弥は全力で止めてくるの。…私はそれでも逃げちゃうんだけど。
ぶつかりあってぐちゃぐちゃになって、怒鳴り合いの喧嘩は数えられないほどしたし、別れたこともある。」
「それでもまだ好きなんですか。」
「……うん、そうだね。けど時々私は疲れちゃってね、もう嫌だって言って何回も実弥を突き放そうとしたの。」
中学の頃からすれ違っていた。それを、お互い見過ごしていたのかもしれない。だから今更こんなことになる。私はまだまだ実弥を理解できていない。そして、彼も私を理解できていないのかもしれない。
「うざいって言って、一人にしてくれればいいのに、そんなこと言わなかったの。いつも一緒にいてくれた。…それが嬉しかった。
行冥はそこまで踏み込んでこなかった。私はそれが心地よかったから、大きな喧嘩もなかったのかもしれないね。
でもあの人と違って実弥はどこまでも踏み込んできた。それが煩わしくて、慣れなくて、ほんとうに嫌な時もあったけど、ずっと一緒にいてくれるんだ。」
「だから、悲鳴嶼さんよりも不死川さんなんですか…?」
「……比べるものではないよ。過去の私にとっては行冥が一番だった。今の私の一番は、実弥なの。」
「……それじゃあ、誰でもよかったってことですか。」
無一郎くんは思わぬことを口にした。
「そんなこと、ないよ?あまり言いたくはないけど、実弥にだって前世で結婚した人がいるし、その人との間に子供もいたの。私は彼の中でその人より劣っているかもしれない。」
ムキになって言い返した。
そうではない。そうではないのだけれど、どうすれば伝わるのかがわからない。
「私は………」
「……」
「…私は」
やばい。
どうしよう。
私と実弥の悪いとこしか言ってない。
え、なんかあるでしょいいとこ。ほら考えて……。
う~~~ん何にも出ねぇ!!
改めて考えると何で付き合ってんだってレベルで噛み合ってない。
今も私が一方的に拗ねて喧嘩中ですし!!