第57章 ルピナス
おはぎのことは安心して任せられたので、私たちは電車で遊園地に向かった。
当日券でも全然入れたのでほっとした。
「師範、カチューシャつけましょう」
「え」
無一郎くんがスタンドで売られている、花の飾りのついたカチューシャを指さした。
…ああ、よくSNSとかテレビで女子高生とか、小さな子がつけてるやつだ。私にはちょっときついかな。
「……ああ〜」
「すみません二つください」
私が断る前に無一郎くんが店員さんに話しかけていた。慌てて追いかけて、結局自分のお金で買った。
「…お金全部出してもらっちゃって申し訳ないです。」
「いいよ。君の分くらい出せるよ。」
母親の仕送りのために今まで散々ガマンしてきたんだ。
…これくらいの贅沢、許されるよね。自分で稼いだお金だもん。
「僕も将来稼げる男になります。」
「……ほどほどにね。」
お金に囚われたって、いいことなんてないんだから。
「師範に何か奢ったりしたいです。何がいいですか?」
「ええ〜」
カチューシャをつけつつ、少しだけ頭を悩ませた。
「コーヒーとかジュースとか、そういうのが嬉しいかなあ。」
「…そんなのがいいんですか?」
「んん、まあ。そういうの飲みながら、お話ししているのが楽しいんだよ。」
「そうなんですか。わかりました。」
無一郎くんはそう言ってカチューシャをつけた。
……思いのほか結構恥ずかしいな。