• テキストサイズ

キメツ学園ー輪廻編【鬼滅の刃】

第57章 ルピナス


朝起きるとまだ無一郎くんは寝ていた。

手が触れたままだったことに気づき、離そうとしたが離せなかった。
離れようとした途端にぎゅっと無一郎くんの手に力が入ったからだ。寝ているのに…なんと器用な。


私は体だけ起き上がって、寝ている無一郎くんの顔を見下ろしていた。


「……」


幼い寝顔に笑みが溢れる。そっと頬を撫でると、少しくすぐったそうに顔が動いた。

愛おしくて。
本当に愛おしくて。


殴りたいとも、罵ろうとも思わない。
ただただ抱きしめたくて、ずっとそばにいたいと思う。

これが愛。
この子が、私に教えてくれたもの。


我が子にも、今と同じ感情が持てるだろうか。


不安だ。
未来が怖い。
いっそのこと未来なんてなければいいのに。

ツンツンとその頬をつつく。
まだ起きる気配はなく、すうすう寝ていた。


未来が怖い。過去は嫌い。

でも、私は今が大好き。


過去の傷のために、恐ろしい未来のために、今を捨てるくらいなら。


「………生きたいって、思うんだよね。」


正しいのだろうか。
それはまだ分からないけど。


「…他の誰でもない、君が望んでくれるから。」


私は私の意思を通したい。

どうなるか分からない。


未来は、私には見えないから。


辛くて、辛くて、その苦しみの中にいたいと思うけれど。
前を見ないといけない。進まないといけない。

私は弱いから、それが難しいけれど。


泣いて泣いて泣いて泣いて泣いて。
逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて。


「生きるよ」


今は、ただひたすらに。

がむしゃらに。もがいて。抗って。戦ってみせる。


私は傷に負けない。
痣にも負けたくない。
何より、自分自身に。


私が決意を新たに顔を上げると、もう無一郎くんの手には私を食い止めるほどの力は込められていなかった。


「にゃあん」


おはぎも起きたのか私たちの元に歩み寄ってくる。


『バカ面がちょっとはマシになったか。』

「…そうかな。」

『まあ、とりあえず。小僧は見てるからお前は顔でも洗ってこい。』


おはぎにそう言われて私は頷いた。太々しい顔でおはぎは無一郎くんのそばに座り、その場に留まった。
/ 1161ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp