第56章 時間はない
私って、とことん誰かと一緒にいるの向いてないよな。
家族ともうまくいかなかったし、鬼殺隊でもうまくいかなかったし。
おお、先が思いやられる。大丈夫か。結婚はもうちょっと考えた方がよかったんじゃないか。
ていうかいつ帰ろう。
……いや、帰るつもりなんてないんだけど。
それをどうやって説明しよう。
私の体は傷だらけだ。
痣が燃えている。
私の体を燃やして、燃やして、焦がしている。
珠世さんは問題ないと言った。それを一度は信じた。
けれど違う。
ダメだと、私の不思議な力が言っている。
未来…が見えた?と言えばいいのだろうか。なんとなく、予知はできる。多分もうすぐ燃え尽きる。
その前に、私が終わる。
ちゃんと言葉にしてこれを話さないといけない。
でも話したくない。
もう逃げたい。逃げたいから、今逃げた。
無一郎くんを巻き込んでしまった。
ただ延々と暗闇を行くような気持ちだ。
「…師範……?」
電話を片手に立ち尽くしていると、後ろから声をかけられた。
私は笑顔を貼り付けて振り返った。
「なあに?」
無一郎くんは一瞬顔をしかめたが、いつものようににっこり笑って私の元へ駆け寄ってきた。
「さっき窓から見たんですけど旅館のお庭が綺麗なんです。見に行きませんか?」
「ああ、それはいいね……ところで、無一郎くん。」
「なんですか?」
「……このこと、家族には」
「言ってません」
「ですよね〜!!!!!!!」
言ってたらこんなところ来られないもんね!!はいおしまいです私の人生終わりです!!おまわりさんこちらです!!
犯罪者まっしぐらじゃん!!まじか!まじでか!!!言い訳のしようもございませんが!?!?!?!?
「けど、僕しょっちゅう行方不明になるので大丈夫だと…」
「え!?」
「なんか、歩いてたらいつの間にか隣の県にいたり、ぼうっとしてたら危ない組織の事務所にいたり……」
「いや、ちょっとは自分や周りのことに興味持たない!?そう言うところは変わってないの!?!?」
「だから大丈夫です」
「いや、それで家族も『またか〜』とはならないでしょうよ!?」
頭を抱えた。
今すぐ家に連絡するように言ったが、無一郎くんは嫌だと言って聞かなかった。
…この子の家の連絡先知らないし、これはどうしようもないな。