第7章 告げて
さようなら。
さようならさようなら。
無一郎くんさようなら。
ボロボロになって泣いていると、外に気配を感じた。
それに気づいても涙が止まるはずもなく私は泣き続けた。
ドアがノックされて、扉が開く。
明日は退院だから、荷物を病室から持っていかないといけない。今日来ることは知っていた。
実弥は一人泣いている私を見ても驚かなかった。
「時透とすれ違った」
私のそばまで歩み寄る。
「お前、何言ったんだよ。」
…怒ってる。
痛いほど伝わってくる。
「泣いてたぞ…目を赤くしてよォ」
分かってる。分かってるよそんなこと。
「……私、だって」
私は声を出した。掠れた汚い、醜い声だった。
「私、だって、だ、大好きだし、ぁ、愛、愛してた」
「……」
「でも」
そんな綺麗な言葉だけじゃ言い表せない。
「生きていてほしかった、鬼狩りなんてやめて、普通の幸せを手に入れて、平和に生きてほしかった。」
湧き上がってくるのは絶えることのない苦しみや切なさばかり。
そうして話しているうちに、私は実弥の腕の中にいた。
「……皮肉なもんだなァ」
独り言のように彼がぼやく。
言葉の真意はわからない。彼の声が震えている気がして、そこで私は黙ってしまった。
「、お前は間違ってないのかもしれない」
「……」
彼の背中に手を回す。
実弥は文句も言ってこなかったので、しばらく甘えるようにその腕の中にいた。