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キメツ学園ー輪廻編【鬼滅の刃】

第7章 告げて


無一郎くん。

ごめんね。


本当は。


「もう、手を握って一緒に歩いてくれないんですか。」


私。


「師範と会えたら、また、一緒に歩きたかったのに。」


ああ、もう。

これ以上は。


「……。」


反応を示さない私を前についに無一郎くんが話すのをやめた。


「……。」


無一郎くんから寂しさや悲しみといった感情が伝わってくる。それに胸が引き裂かれそうだった。


「……僕を」


声がか細い。


「僕を…ッ、う、ぁ、ぼ、ぼく、………あ、ぼく、…う、うぅ」


話す言葉より嗚咽の方が大きくなった。


「…僕、を」


耳を塞ぎたかったが、手が冷え切って、動きそうにもなかった。


「僕を」


時間が長い。いつまでも続きそうだ。


「……愛して、くれて…ぁ、ありがとう、ございました」


そして続ける。


「さようなら。」


お別れの言葉。

いつもいつもその言葉が嫌いだった。けれど、言わないといけないのが辛かった。


やっと顔が上がった。しかし、無一郎くんはもういない。


「…愛、して、くれて……?」


愛。愛。

…愛情。


そう。私はいつの間にか彼に対して愛情を持つようになっていた。

最初はお館様の言葉が気になっただけ、鬼に全てを壊された子供を放っておくのが嫌だったから。


ほんの少しだけ、何もできなかった昔の自分を思い出したから。


大好き。大好きだったよ無一郎くん。抱きしめて、頭を撫でて、手を繋いで。本当はそうしたかった。本当は。

けどできなかった。

私が人間として残された時間は二ヶ月だった。無一郎くんをその期間で一人前に育てるか、鬼殺隊を諦めさせるかしないといけなかった。


いつもいつも付きまとう愛情が邪魔だった。


私は無一郎くんから目を逸らし続けた。愛情に気づかないふりをした。でも愛なんて与えられることなく育った私にも、愛情に逆らうことはできなかった。

完全に突き放すことはできずにいた。私は目を逸らし続けた。


今更、面と向かい合うことなんてできるはずがない。
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