第55章 いい子いい子
猫を抱いて、ちょっと大きなカバンを持って歩く私は一体何なんだろう。
(ていうか何をしているんだ私はーーーーーーーーーーーーーー)
今になって言動全てを後悔し始めていた。
実弥にとんでもないことを言ってしまった。なんで私はいつもこうなんだろうか。
………お母さんとやってること同じだよ。
なんか、謝っても許してくれるかわかんないし、本当に実家帰りたいな。でも突然行ってもさ、迷惑じゃん。
そうだよ。本当は私、おばあちゃんとおじいちゃんと暮らすはずじゃなかった。
お母さんとお父さんと暮らしていたんだ。暮らせていたんだ。だから、そうあるべきだった。
子供にはいるべき場所と行くべき場所がある。
私はそのどこにもいなかった。全て切り離した。
諦めればよかったのだろうか。
ああ、『助けて』だなんて。
実弥は助けてくれた。私が『助けて』と叫んだら来てくれたよ。私の体を触ったお父さん相手に、それでも父親かと怒鳴ってくれた。
助けてくれたんだ。
今の暮らしがあるのは実弥のおかげ。
おじいちゃんもおばあちゃんも、私みたいな厄介者を押し付けられて可哀想。実弥だって本当なら、あんなことしなくてよかったのに。
私は私がわからない。どうして実弥にひどいこと言っちゃうんだろう。最低なこと言った。あんないい人に。
優しいから怒らないし、彼は言い訳もしない。
私の中に何かがいて、私の中で暴れている。
それを抑えられない。母もそうだったのだろうか。自分の何かを抑えられなかったのだろうか。
ドロドロした私。
私はもうダメなんじゃないだろうか.
もうとっくの昔にぶっ壊れていたのかもしれない。
ようやくそれがわかってきた。
いつも閉じこもる。一人で、一人で閉じこもる。
そうやって生きてきたんだ。
どんなに苦しくても、一人で閉じこもって耐えしのいだ。