第54章 痣、燃ゆる
それで何があったのかと改めて聞いてみると、実弥は渋々と言った様子で話し始めた。
「真面目に考えてはみたんだ。」
「何を?」
「……結婚式」
そう言われて、私はハッとした。
「お前は考えてなかったのかァ…!!!」
「あ、いや、あはあ、その、まあ…ヘケッ」
「気持ち悪い笑い方すんな。」
視線を逸らしつつ、なんとか話題も逸らしたかった。
が、それはできるはずもなく。
「で、でもさあ、私たちがやりたくないってことで意見が合ってるならもういいんじゃない?こういうのって本人たちの意思が大事って………
ネット記事に載ってた!!」
「情報源の信憑性が限りなくゼロなんだよなァ。」
実弥は困ったように首の後ろを撫でた。
「あー、俺もあんまし興味ねェ。けど………。」
「けど?」
「………」
急に黙り込んだので、首を傾げた。
長いタメの後に実弥はようやく続きを話した。
「…お前の、ドレス姿は……見てェ」
「ッはい!?」
思わぬ言葉に自分の顔が赤くなるのがわかった。
「ええええええええええええどうしたの!?なんで!?急に!?キャラ変!?」
「ッうるせェ!!別に思うくらいいいだろうがァ!!!」
「ええええええええええええええ!!!!!」
私は具合が悪いのも忘れて叫んだ。
あああごめんなさいご近所さんたち!!けど今だけは許して!!!
「……いや、その、悪い、なんでもない。」
実弥は顔を赤らめて顔をそらした。……変なリアクションしちゃったけど、せっかく頑張って言ってくれたのに悪いこと言っちゃったかな…。
私は彼をフォローしようと肩に手を置いた。
「あっ、いや、でもさあほら!!きっとそんなもん大したことないって!!!」
「……あ?」
「七五三とかも着物だったし、今までドレス着たことないしさ。どうせ似合いっこないよ。」
「………そうかァ?」
「うん。私がひらひらしたの着たってどうしようもないでしょ。私たちのことは私たちで決めよう。」
ぽんぽん、とまた肩を叩く。
実弥はじっと黙ってなんだか考え込んでいるようだったが…きっと私の気のせい、かな。