第53章 心通わせ
はあ、と部屋に大きなため息が響く。
陽明くんは腰掛けていた椅子から立ち上がった。
「俺もあの人たち追いかけよ〜っと。んじゃあ、騒がしくしてごめんなさい。…まあ、その、頑張ってね。」
最後に気まずそうに言い残して病室から出て行った。…この物言い、まだ私に何かある気配がするんだよなぁ〜。
陽明くんを見送った後には巌勝が残った。
「嵐のような家族だ。」
以前、縁壱さんが霞守母を見て『嵐のようなご婦人だな』と言っていたのを思い出した。
やっぱり双子だ。言ってること同じ。
突然笑い出した私に彼は眉をひそめつつ、話を続けた。
「ところで、お前は無一郎をどうするつもりだ。まさかこのままにする訳ではあるまいな。」
私は首を傾げた。
「正気か?」
なんの冗談でもなく、本気でそう聞かれたのでなんだかカチンときた。どう言うことだと尋ねると、彼は言った。
「どう考えも無一郎はお前を好いているだろう。」
ああ、そうだね。そうだね。ありがたいことに随分と懐いてくれていて…
「違う、無一郎はお前を女として見ているのは明らかだからこのままにしていてはまずかろう。」
ん?
「いつもお前にべったりであからさまではないか」
はあ、それはそうだけど
「……その様子だと、全く気づいていないようだな」
頭を抱える巌勝にかける言葉がなかった。
私はぼんやりと無一郎くんの言動を思い出したが、それにあたるものに覚えがなくただ途方に暮れた。