第53章 心通わせ
二人にはいろんな話を聞いた。
結局、あの時巌勝が言っていた通り母親は学園に来ていなかったらしい。巌勝が私を呼び出すためについた嘘…というか、口実だったらしい。
素直に驚いていると、巌勝は私が気づいていないとは思っていなかったらしくて彼も驚いていた。
「まさか信じるとは思わなかった。お前、嘘をついているかどうかはわかるのではなかったか?」
そんな冷静な行動はできなかったと言うと、巌勝は呆れ返っていた。
…ん?待てよ。じゃあ、あの時の実弥の電話は何だったのだろう。ほら、体育館に行くきっかけになった、あの…。
「それはですね、この時代の実弥じゃないですね。違う時代の、その、目に見えない方の実弥ですね。」
陽明くんがヘラヘラと茶化しながら教えてくれたが、それを聞いてゾッとした。
え、ちょっと。あの電話の後に私のスマホ壊れて今もお陀仏なんですけど、その。怖すぎません??
「怖くな〜い怖くな〜い、守護霊みたいなもんだからァ〜」
「……気にする必要はないだろう。」
二人とも何もない私の背後にわざとらしく目を向けた。
いや嘘なのか本当なのか分かりにくい感じ出すのやめて!!怖すぎるって!!!!!
「ああ、そうそう。さんのお母さんについてなんですけど…。」
「それは私が話す。」
その時、陽明くんのものでも巌勝のものでもない声が聞こえてギョッとした。
声の方を見ると、二人が開けっぱなしにしていた病室の入り口のそばに中年の男の人が立っていた。
白髪はちらほら目立っていたが、顔はキリッとしていてなんだか怖そう…?
でもこの人、見たことあるようなー…ないようなー…??
「陽明、お前はまた学校をサボってこんなところにいたのか…霞守の長男が聞いて呆れる。」
「………何もきこえませーん」
陽明くんは耳を塞いでベッと舌を出した。
巌勝がペコリと頭を下げたので、私もそれに続いた。
「ああ、ご無理はなさらずに。どうぞ寝ていてください。」
礼儀正しくそう言われ、私は起き上がるのをやめてお言葉に甘えてベッドに横になった。…正直、座っているだけでしんどかったから助かる。