第53章 心通わせ
「で、結婚式はいつなんですか?」
外をぶらついて戻ってきた実弥に無一郎くんはクリティカルヒットを決めた。
実弥は頭痛がすると言ってまた出て行こうとしたが、その時ちょうど病室に入ってきた人物に止められた。
「…理事長」
「やあ、の具合はどうかな。……無一郎は今日も学校を休んでここにきたみたいだね。」
「うっ」
あ、平日なのになんで来られたんだと思ったらサボりだったんだ…
大丈夫なんだろうか。一番バレたらダメな人にバレているけれど。
「嘘で風邪というのはやめなさい。皆心配するからね。」
「はい…」
「それで、話し声が聞こえてきたのだけど…」
理事長はにこりと実弥に笑顔を向けた。
「実弥、そうやって逃げてはいけない。何のために休暇をあげたのかわからないだろう。ちゃんと向き合って。大丈夫。実弥のことは信じているから。」
「……はい」
いや声ちっさ。
「いいじゃないか。結婚式。みんなを招待してみたらどうだい。」
「いや、でも、は具合が悪いし、俺は別に、そういうのは…」
「…そう。はどうかな」
いきなり話を振られて私は首を横に振った。
微塵も興味がありません、と言うと大きなため息が聞こえた。
ああ、この声は聞き覚えがある。
…カナエだ。
ねえ今日平日だよね?何でみんなひょいひょいお見舞いにくるわけ??
「私は有給取ってるわよ。」
あ、なるほど。
「ダメ、二人とも全然ダメ。」
カナエは仁王立ちになり、かっと目を見開いた。
「そんなことでどうするのよ!!人生は一度きりよ!?私は…!!私はのウエディングドレスと不死川くんのタキシード姿が見たいわ!!ツーショットをカメラにおさめたいわ!!!」
「そりゃお前の願望だろうがァ!!」
「私も二人の晴れ舞台が見たい。」
理事長にまで言われ、実弥はうっと悲鳴をもらした。
「僕も!僕も見たい!」
無一郎くんも興奮気味に口を挟んできた。
実弥は限界だったのか、何も言わずに病室を飛び出した。
…困ったことになったなあ、と呟くと全員苦笑していた。