第53章 心通わせ
先輩は私が救急車に運ばれてから今に至るまで間の話を聞かせてくれた。
「改めてあん時の怪我人を調べたが、結局お前一人だけだった。んで、童磨に加担した奴らは全員逮捕。氷雨春風を初めとする連続傷害事件は証拠と自白が取れたおかげで勝訴して、慰謝料もろもろ全部ゲットできたってよ。
で、大体の事故の責任をとった後、おとなしくしてるかと思ったけど童磨のやつ上手く逃げたんだよ。」
それを聞いた時は私と実弥で一緒に驚いた。
しかし、この話には続きがあった。
「それがな、逃げた先でたまたま見かけた甘露寺のやつを襲おうとした時にグーパンで一発KOにされたらしくて今はちゃんと牢獄にいるってよ。アイツ最強だよな!派手派手でムカつく女だぜ。」
そんなことを言うけれど、私は蜜璃が心配でたまらなかった。しかし本人はケロッとしていて、『先輩の仇をとってやる!』と息巻いていたのでこのことにたいそう喜んでいたとか……。
いや、あの子本当に何者なの??
「んで、加賀美アリスはお前が被害届を出さなかったことでソッコー釈放。けど弁当屋と下宿はやめて…今は童磨の宗教団体からも離れて、自分が育った施設で働いてるんだとよ。
いつか会いに行ってやったら喜ぶんじゃねえか。」
それを聞いて私はホッとした。
「そうそう。下宿に置いてあったバカでかい絵、お前のだろ。まだあの部屋にあったから一時的に学園に置いてある。旦那に取りにきてもらえよな。だ、ん、な、に。」
この数秒後、実弥が怒鳴って看護師さんに注意されていた。
実弥は強がっていたけれど、耳が真っ赤になっていた。私も顔が赤くなっている自覚があったので、布団をすっぽりかぶって顔を隠した。
「お前ら、そんなんでこれからどうすんだよ。入籍報告も地味にメールで済ませやがって、このこの〜。」
この後、やっぱり結婚には向いてないのかもしれないという話を二人でした。
…結婚ができたのは嬉しいんだけど、それをみんなに言うっていうのはどうやら私たちにはハードルが高かかったらしい。