第53章 心通わせ
私たち結婚に向いてないのかもね、そうだな、なんて話し合って二人きりの病室で反省会をしていたのも束の間。
私はある日トイレまで行く途中でぶっ倒れた。
大慌てで検査をしたところ、健康な人では全くあり得ないほどの数値を叩き出して貧血だと診断された。
もう傷は全快しており、明日には退院のはずだった。
「この怪我をたったこれだけの日数で治すなんてどんな体をしているんですか」
病院の先生はこんなことを言っていたけど、うん。本当に退院の予定だったんだよ??
結局、妊娠が原因だとわかって今は産婦人科である。
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というわけで、私は今産婦人科で入院中。
毎日毎日鏡を見るたびに死にそうな顔をしている自分がいて、お見舞いに来てくれた人にもろくな挨拶もできないほどだった。
産婦人科に来た時に初めて私が妊娠していることを知る人ばかりで、なんで言わないんだとか、どうしてそんなことになっているんだとかしばらくは騒がしかった…。
と、まあそんな悠長なことも言ってはいられず。
「大変よ、ちゃん。赤ちゃんに全ての栄養を取られているみたい。食いしん坊な赤ちゃんね。赤ちゃんはすっごく元気なのに、お母さんは3秒後には消えそうな顔をしているわ。」
なんて先生が真剣な顔で言うものだから、私は笑ってしまった。
いや、笑い事ではないのだけど。
「霧雨ぇ……いや、今は不死川か。あ、待ってお前も不死川じゃん。なんて呼べばいい?ははっ。」
宇髄先輩が見舞いに来た時に実弥の肩をバシバシ叩きながらそんなことを言った。実弥は怒ってプルプルと震えていたが、何も言い返せないようだった。
「体育館が全壊したやつだけどなあ、全面的に童磨が悪いっつーことになったわ。まあ当然だが。だから、お前の口座番号はシュレッダーにかけといた。」
その後、アリスちゃんと童磨くんのことを聞いてみたが、先輩は少し面倒くさそうに長い話を聞かせてくれた。