第53章 心通わせ
天晴先輩と春風さんはしばらく経ってからきてくれた。
「なんの打ち合わせもしていないのに、全員同じタイミングで病院抜け出しちゃったの」
天晴先輩は飄々とそんなことをカミングアウトした。
「入院している間も産屋敷に言われて色々と動きましたよ。まあ、私たちは事故後に警戒されることもなかったので楽勝でしたけど。人使いが雑なんだよな、産屋敷はよ。」
春風さんは松葉杖片手にブチギレていた。
…もはや私にさえも本性を隠さなくなったのかな、この人。
そうして人がたくさん見舞いに来てくれる中、全員口を揃えてこう言うのだった。
「なんで病室のプレートの名前が不死川になってるの?」
「いつの間に不死川になったんだよ」
「え?あれ?……結婚した?」
「は?お前、不死川?」
「病室間違えたかと思って五度見したんだけど!?」
「病室のプレートの名前が間違っているんじゃないか。」
「ええ!?不死川ってそういう!?ええ!?!?!?きゃーーーっ!!」
「おめでとう。結婚したんだな。」
………はい。来る人来る人みんなこう。
カナエも宇髄先輩もアマモリくんも優鈴も桜くんも伊黒くんも蜜璃も冨岡くんも。
とりあえず、この人たち以外もとにかく、話を聞きつけて病室まで来てくれた人全員。
「ええーーーーーーーーーーーーーー………不死川さんと師範がぁ……?」
無一郎くんも。
とにかく全員驚いていた。
もとより知っていた理事長にそのことを相談すると、いつものように優しく相談に乗ってくれた。
「これだけたくさんの人が病室に来てくれるということは、が今までそれだけのことを皆にしてきたということだね。誰に対しても愛情深く接してきたからだよ。」
でもね、と続けた。
「少しは自分のことを皆に話しなさい。一人で抱え込んだまま逃げてしまうのがの悪いことだと言うのは、私はもうわかっているよ。」
ぐうの音も出なかった。そして、隅っこで大きな体を丸めている実弥にも言った。
「実弥も、照れ屋なことはわかっているけれど、恥ずかしいと言ってばかりではいけないよ。」
結局、痛いところをつかれて二人ともお説教を受ける形で相談は終わった。