第51章 リスクヘッジ
「童磨くん」
私は改めて彼の名前を呼んだ。
「正直に言うと、私は君の最後の目的まで辿り着けなかった。でももう、これで私にできることは終わりだよ。」
「ええ?そうなの?なんだあ、もっと面白いことしたかったのに。」
童磨くんはやはりにこやかに笑っている。
「まあいいけど。じゃあとりあえず「童磨!!!!!」」
その時、彼の話を遮る甲高い声がした。
声には聞き覚えがあって、私は振り返った。
「アリスちゃん」
可憐な女の子の登場に、その場にいた全員が驚いていた。
「アリス!ああ、よかった来てくれたんだねえ!!」
童磨くんは快くアリスちゃんを出迎えていた。……やっぱり、アリスちゃんは童磨くんと繋がっていたんだ。
「…本当にやったのね」
体育館の惨状を見てアリスちゃんは顔をしかめた。
「アリス、来てくれたところ悪いんだけどもう終わりなんだ。全部計画通りだから安心して。」
「……そう。」
アリスちゃんはぐっと何かを堪えたように見えた。そして、私の目を見つめた。一瞬アリスちゃんが苦しそうに顔を歪めたので、心配になった私は彼女に一歩近づいた。
しかし。
次の瞬間、ビシッと頭に痛みが走った。…頭痛じゃない。耳鳴りでもない。
私はその場に倒れ込んだ。ぬるっとしたものが額から垂れてきて、何が起きたのか一瞬わからなかった。
「」
「師範!!!!!」
実弥が名前を呼ぶ声がした。続いて、無一郎くんの声。
「…え、いや、今の俺じゃないけど……」
童磨くんの戸惑った声も聞こえた。
私は何とか起き上がって周囲を見渡した。すると倒れたすぐそばに石が転がっているのが見えた。
…石を投げた?
誰が??
「もういいわよね、童磨」
____アリスちゃん
「あなたの罪は全部私が被ってあげる。だからもう帰りましょう。」
震える涙声が体育館に響いていた。
状況が飲み込めない私は、ただただその光景を眺めるしかなかった。