第51章 リスクヘッジ
巌勝が車で送ってくれて、学園にはすぐについた。
駐車場に車を停めた時に巌勝が後部座席を振り返らずに言った。
「私は一旦ここで待つ。」
「そう。来ないんだ。」
「ああ。少し野暮用があってここに人を呼んでいる。」
「……かのじ「くだらないことを言う暇があるのならさっさと行け」」
冗談がすぎたか。チェッ。ちょっとくらいのってくれてもいいのにな。
まあちょけていられるのもここまでだろうな。
「ありがとね、巌勝。あなたにここまでしてもらえるとは思っていなかったわ。」
「雇われの身だからな。」
最後までその姿勢を崩すことはなかった。
「私が言うのもおかしいが、気をつけろよ」
「どうして?」
私はにこりと笑った。
「何もおかしくないわ。嬉しい。ありがとう。」
「……」
最後は無言だった。実弥は結局、電話以外で巌勝とは話さなかった。
車から降りると学園からは不穏な気配がして、私は重い足取りで実弥と中へ入っていった。
さて、お母さんはどこで何してるのか…
「職員室で様子を聞いてくるから、お前はここで待っててくれ」
「本当?じゃあお願いね。」
私はその言葉に甘えて玄関で待つことにした。置いてあったベンチに腰掛け、カバンをお腹の前に抱えて彼が戻ってくるのを待った。
……。
お休みの日の学園って不気味だな。部活動をしている子供達の気配が少しだけするけれど、まだ朝も早いしそんなに人もいないらしい。
ぼんやりとそんなことを考えていると、スマホが鳴った。
_____実弥?
「もしもし」
戻ってくればいいのに、なんで電話なんかかけてくるんだろう。そう思いつつも何かあったらいけないと電話に出た。
『ああ、お前の母親なんだが、学校の中から追い出したところ体育館で騒いでいるらしいんだ。』
「えっ」
『職員室にはいなかった。今の時間は生徒はいないだろうが…。』
「わかった!ありがとう!!」
実弥への応答もそこそこに電話を切った。行かなければ。
走りたかったが、最近は寝不足もあって具合が良くない。到底動き回ることはできないので、できる限りの早歩きで体育館に向かった。
通っていた学校だ。場所は大体頭に入っている。