第51章 リスクヘッジ
朝から機嫌の悪い実弥と朝ごはんを食べている時、スマホが鳴った。
「……巌勝だ」
そう言った途端。室内になんとも言えない緊張感が走った。
「もしもし?おはよう」
『呑気に挨拶をしている場合ではない。さっさと降りてこい。』
「…ええ、どこ行くの?」
『キメツ学園だ。まずいことが起きている。』
巌勝は声を低くして唸るように言った。
『お前の母親が学園に来たと、産屋敷から連絡が入った。』
「……は」
『何をしに来たか…まあ、お前目当てだろうな。から援助を受け取ることができなくなってのことだろう。連絡先の全てを遮断されたから連絡を取らせろと騒いでいるみたいだぞ。』
言葉を最後まで聞かないうちに私は立ち上がった。
「すぐ行く」
『そうしてやってくれ』
上着を羽織り、真っ先に玄関に向かう。
「阿呆」
実弥が後ろからそう言った。
こんな時に、と思って振り返ると実弥が私の額にデコピンをかました。
「いたっ!!!」
「頭を冷やせよ」
実弥は私にそう言った。
「すぐ行動するのはやめろ。まず電話代われ。繋がってんだろ。」
「あ、うん」
そして私の手からスマホを奪い、何やら話しだした。今度は私が電話に耳を済ませることとなった。
「俺だ、不死川」
『何だ』
「は学園の部外者だ。入れられねェ。俺が行く。」
私はその発言に驚いて開いた口が塞がらない。
『それもそうだが、産屋敷がを呼んでいる。』
「…あ?」
『入校許可は降りている。さっさとソイツを送り出せ。』
実弥はしばらく考え込むように黙った。
「なら俺も行く。」
『…来るなら来い…一応、来るなと言っておく。私は止めたからな。』
巌勝との電話はそこで終わったらしい。
実弥はスマホを壊しそうなくらい強く握りしめていた。
…巌勝が何を言おうとしていたのか私にはわかる。
この先の未来はなんとなくわかっている。
どうしようもないくらい心が落ち着いていて、私は無責任にも実弥の手を握った。
「お願い」
私の手は震えていた。
「いっしょに来て」
言い終わる前に、実弥は私を腕の中に閉じ込めた。
その温もりに涙が出そうになったが、必死にこらえた。