第50章 鬼、鬼、鬼
実弥が帰ってくるまで仕事をして過ごした。…もちろん、休憩を挟みながら。
そうしているうちに実弥は帰ってきた。
晩ご飯を食べ、お風呂に入り、もう寝るだけかと言うときに私は立ち上がって実弥にテーブルに座るように言った。
「なんだよ」
実弥は緊張感のある顔で言った。
私は戸惑う実弥の前にきなこのおはぎを乗せた皿を置いた。
「…は?」
「これは巌勝に買ってきてもらったおはぎです。めっっっちゃ高級なやつ。」
「……はあ。」
私はその横にお茶の入った湯呑みを置いた。
「お前の分は?」
「予算の都合上、一つが限界でした。」
「そんなに高いのかよ。」
…同じお店のおまんじゅうを三つ食べたことは黙っておこう。
いや違うから。おまんじゅうのせいでおはぎが一つしか買えなかったわけじゃないから。
「突然ですが」
「…は、おい、なんなんだよ?」
実弥は嫌そうに向かいに座る私に皿を突き返した。…これまでにあったことから、今から嫌なことが起こると思っているらしい。
しかし、私はぐいっと皿を押し返した。
「赤ちゃんの性別がわかりました!!!!!」
「……………は」
「それでは性別発表会〜!!!!!!!!」
私はパチパチと手を叩いて無理やり盛り上げた。
ポカンとしている実弥をよそに私は説明を始めた。
「そのきなこのおはぎの中のあんこがつぶあんだったら女の子、こしあんだったら男の子です!さあガブっと!!!!!」
「は?は?」
実弥はキョトンとしながらもおはぎを手に持った。
「なお、性別は謎のままがいいんだったら私にください。」
「……」
彼は私とおはぎを交互に見比べていた。
「ほ…本当に性別が分かったのか?」
「現時点で6割確定らしいの。私は不明のままにしておいてもらったんだけど気になっちゃって。まだ絶対じゃないから、今知る必要もないのよ。」
私が説明すると実弥は頷いた。
「ちなみに、どっちがいいとかあるの?」
「ねえよ。なんだろうが嬉しいってことに変わりねえだろ。」
実弥は微笑んだ。
私もその顔を見て笑った。
「私も同じ!」
「ん」
実弥は短く返事をして、勢いよくおはぎにかじりついた。