第50章 鬼、鬼、鬼
実弥はモグモグと静かに咀嚼する。
…おはぎでこんなに緊張している実弥は初めて見た。
「………つぶあん?」
そして慎重そうに言うものだから、もう私は我慢できずに吹き出した。
「は、おい、つぶあんであってるよな」
「ブフッあってるよンッフ」
笑ったらダメだ笑ったらダメだと思いつつも、笑い声が駄々もれだった。ごめん実弥。
「ってことは」
と言いながら残りを食べた。
「…女か」
「女の子と言いなさい」
そんな真顔で刑事ドラマの修羅場みたいな。
「でも~確定じゃないらしくて、男かもしれないし女かもしれないしって。」
実弥はモゴモゴと静かに咀嚼を続けていた。
「なんか閃いたからおはぎで発表会やってみたわ。」
「………おう」
「あぁ、笑った。」
私はそのまま部屋に行ってベッドに入った。
スマホをポチポチいじって、明日のことを考えていた時だった。
「」
「うおっ」
急にドアを開けられて起き上がる。
「なに」
「ヤバい」
「…はい?」
「眠れねェ」
「………」
「なんかこう…落ち着かない」
ソワソワして目をギンギンにしている様子にため息をついた。
「いいよ、おいで。一緒に寝よう。」
「おう。」
実弥は私の横に寝転んだ。…しかし私と一緒に寝転んだところで、彼が眠くなるはずもなく。
「…ねぇ、私もう眠いんだけど」
「寝ろよ」
「…いや、君が寝ないと私も寝れないの知ってるよね……」
気配を敏感に察知してしまう私は、そばに人がいると落ち着かないためその人が寝るまで眠れない。
つかれている時とかは関係なく寝られるんだけど今日はそんなにつかれてもいないし…。
「寝て、実弥、私のために」
「………ん」
「頼むよぉ~…」
ポカポカと力なく叩いた。ごめんと言わんばかりに彼は私の頭を撫でた。