第50章 鬼、鬼、鬼
寒いのが嫌いな私は毛布にくるまって、まるで毛玉のようになって仕事をする。
夜になると余計に寒い。…今度から毛布二枚重ねにしようかな。
お腹の子は冬の間は私のお腹にいることになるけれど、私の寒がりがうつらないことを祈る。
まだまだお腹の膨らみも特にないけれど、確かに気配は感じる。ここのところ穏やかで、元気みたい。
…今はただそれが嬉しい。
「おい、毛玉」
おっと。
やべ、仕事に没頭していて気づかなかった。
部屋に実弥が入ってきていたようだ。私はゆっくり振り返った。
「何?」
「寝ろ」
クイッと顎でベットを指す。……なんか、実弥も巌勝みたいになっちゃったなあ。
「あはは、私は“毛玉”なんて名前じゃあ〜りませ〜ん」
私はヘラヘラと笑って仕事を続行した。別に今やらないといけないわけではなくて、なんか今調子がいいというか、今描きたいというか、まあ楽しいので最後まで終わらせたいのだ。
「」
「いいえ私は毛玉です」
「わかった」
え、何がわかったんだと思う前に実弥は勢いよく私を椅子ごと引っ張った。そして、私がギョッとしている間に実弥は毛玉な私を持ち上げ、あっという間にベッドに運んだ。
「ぎょえええええ!!ちょっと!!仕事途中…!」
「電源ここか?」
「ぎゃあああああせめて保存してから電源落としてえええええ!!!」
「ん、わかった」
「んな〜…」
実弥は慣れない手つきでパソコンをいじるのでハラハラしたが、ちゃんと保存してから電源を落としてくれた。騒ぐ私たちがうるさかったのか部屋にいたおはぎがふてぶてしく鳴いた。
「おら寝んぞ、詰めろ!」
「えっ、ちょっと!きゃあ〜!!!」
実弥が掛け布団を広げてバサッと私に被せてきた。勢いに負けて寝転がる私の隣で実弥も横になった。おはぎは面白がって枕元まできて尻尾をペシペシと打ち付けていた。
それを面白がって実弥がぎゅっと私とおはぎを抱き寄せてゲラゲラと笑っていた。
「ははっ。あったけェ。」
「んもう…そうだねっ!」
私はやけになってそう言った。
実弥の言う通り、本当に暖かくて。
私たち二人と一匹は狭いベッドの上ですぐに眠った。
今までの寝不足が嘘だったみたいに、私はぐっすりと寝ることができた。