第6章 桜は散りて
優鈴とハカナちゃんが気になるなか、意外な人物が突然病室にやってきた。
ねえみんな。きてくれるのは嬉しいけど事前に教えて。私ボッサボサの髪の毛でこんにちはすることになるんだ。
「ああ、だいぶ元気そー。よかったよかった。食べ物解禁って言うから向かいの果物屋さんでリンゴ買ってきたよ。いつか食べな。」
と言いながら冷蔵庫にリンゴを入れた。
「ねえ桜くん。」
「何ー?」
「ちょっと大事な話。」
私が言うと、少し緊張感が彼から感じ取れた。
ハルナちゃんのことは気になるけど、まさか言うことなんてできないのでもちろん他のことについてだ。
そう、私の見た夢について。
よく覚えている。
「私、寝ている時ずっと夢を見ていたの。」
「…そう。前世の?」
やけにあっさりと言い当てられたので驚いた。
「わかるよ。霧雨さんが目覚めて初めて会いに行った時に確信したよ。見る人が見ればわかる。明らかに雰囲気が違うんだ。」
……そうなんだ。
自覚してなかった。いや、多分人一倍頭が良い桜くんだからかな。
「で、僕のことでなんかあるの?」
「……薬のこと。」
「そう。何でも聞いて。」
桜くんはまるで、悪事が全部バレてしまった悪戯っ子のように素直だった。
いたって冷静のように見えた。
「青い彼岸花って、覚えてる?」
「………。」
桜くんは黙った。答えないつもりかと思ったが、しばらくすると答えてくれた。
「うん」
観念しましたとでも言わんばかりに。
「よく覚えているよ。」
桜くんは言い切った。
「本当のこと知りたい?」
「ううん、もういい。それだけ聞きたかった。」
「そう。」
桜くんは続けた。
「……怒ってる?」
声が震えていた。
私を見つめる目は、揺れていて今にも泣きそうだった。