第50章 鬼、鬼、鬼
『今日は学園に行って産屋敷と話をしたみたいですけど、ちゃんと全部言ってきましたか?』
「ええ。」
『じゃあ動いてくれますね。』
……ああ、全部わかってるんだなあ。さすがと言うか、話が早くて助かる。
『童磨が出てきたら本当に余裕がありません。さん、本当に神社に来る気はないんですか。』
「………それは」
私はしばらく間をおいた。
「それはまた連絡する。私も準備とかあるし。」
『そうですか。』
「あのさ、陽明くん」
私は気になっていることを素直に聞いた。
「今、君にはどんな未来が見えているの?」
『________』
いやな沈黙だった。すぐに答えない…それがもう、何かを物語っているみたいだった。
『……』
「……」
『ただ、霞が見える…それだけです。』
陽明くんははっきりとは言わなかった。
「わかった。ありがとう。」
『あ、うん』
彼は元気のない声で返事をした。
『連絡、早めにください。』
「わかった。…ごめんね、君も色々大変なのに。困ったことがあったら君も連絡ちょうだい。」
『…ははっ、俺に困ったこととか。』
陽明くんの声はやはり元気がなかった。
『じゃあ、容赦なく頼ります。あなたの方こそ、お気をつけて。』
「うん、電話ありがとうね。あ、あと、最後に…なんだけど。」
『なんです?』
私はうまく話せるかわからないが、話した。
「がんばろうね!!」
彼には見えないのに思い切り力を込めてガッツポーズをした。うん、余計なことを話すより一言で話したほうがいいだろう。
『はいっ気合い入れていきましょー!!』
「うん、じゃあまたね!」
私はそこで電話を切った。
顔を上げると運転席で巌勝がうずくまっていた。
「あれ?どうしたの!?お腹痛いの!?!?」
「…あまり笑わせるな…!!!」
「え!?それ笑ってんの!?なんなの?!ていうか前!!前見て!!!!!」
お腹を抱えて笑うという巌勝のレアショットを拝んだ後、私は家まで帰ることができた。
「あ、そうだ。明日は10時に出かけるけど、あなたはどうする?」
「…無論、警護として同行する。どこに行くのだ?」
私は彼を見上げて行った。
「産婦人科」
巌勝は苦虫を噛み潰したかのように、いやそうな顔をした。