第50章 鬼、鬼、鬼
「その質問にはお答えできません。」
私はムキになってそう答えた。…この人が母とどういう関係かは知らないが、今はそれどころではない。
「緊急の用なのです。急に電話をおかけして申し訳ないのですが、陽明くんに代わっていただけないでしょうか。」
『……わかった』
電話の向こうからそう聞こえてホッと胸を撫で下ろした。『陽明!霧雨さんから電話だぞ!』と、かすかに息子を呼ぶ声も聞こえた。
『げえっ。と、とと父さん!?』
『なんだ』
『なんで父さんが家の固定電話出てるの!普段さわりもしないじゃん!!』
『お前こそ、今日も学校を休んで____』
ギャアギャアとしばらく喧嘩している声が聞こえて、思わずスマホを耳から離した。…何だか聞いているのが申し訳なくて。
『霧雨さん!ごめんやっと代わったよ!!』
と、そんな声が聞こえてきてようやくスマホを耳に当てた。
「あ、ああ…終わった?」
『うん。ごめんね、お聞き苦しいものを…』
「いいよ。それで、電話をくれていた件なんだけど。」
『ああ、阿国から電話があったって聞いていたよ。ええと、ねえ、ごめん、さっきまでドタバタしてて…ううん、何から話そうかな。』
母親に説教をくらい、父親とは喧嘩をし、そりゃ混乱するよね…。私はあまりそんな経験がないけれど。
『さん、今日は学園に行きましたよね。』
「うん」
『知っての通り、俺と阿国は学校を休んでます。……たぶん、もうしばらく行くことはないでしょう。童磨が明後日には警察から解放されて外に出てきます。』
そう言われて、いよいよかと私は手に力を込めた。
「それで大事をとって休んでるの?」
『阿国はさんとそっくりですからね。俺は学校に行っちゃうとろくに連絡も取れないので、それで。まあ親にはサボってるの元からバレてたんで俺はいいんですけど。』
陽明くんは淡々と話を進めた。