第49章 ジハード
理事長は優しく微笑んだ。
「今も昔も、は変わらないね。」
私は首を横に振った。
「変わらないのではなくて、変わることができないだけです。」
「…そうだね。きっと私も同じだ。わかったよ。このまま足踏みするよりも、に一任するのが良い。」
理事長は力強く言った。
「ありがとうございます」
深々と頭を下げて礼を言った。
「今も昔も、信じているからね。」
そして、嬉しい言葉をくれた。
そうだ。この人は、何があっても私を信じてくれていた。
「……本当は」
言うのが少し躊躇われたが、私は口を開いた。
「本当は、最後まであなたのおそばにいたかったです」
言ってしまえばそれは簡単だった。
「私は未来のことを考えることができませんでした。ただ、桜くんの想いを信じて、みんなで鬼になることを夢に見た。あの時はただそれだけでした。」
何も悔いはない。
「私は鬼殺隊になるしかなかった。それ以外の未来などなかった。けど、それがどれほど幸せだったか。鬼殺隊を離れることは…。」
言葉を止めた。けれどそれを一瞬だった。
「とても辛くて、悲しくて、いやで、でもそうするしかなくて」
幼児が駄々をこねるようだった。
「最後にお会いした時は、泣くのを必死に我慢していました」
最後の日にお館様に会いに行った。
目が熱くなって視界がぼやけたのを覚えている。
「……私の方こそ」
理事長はどこか懐かしそうに窓の外の空を見上げた。
「最後まで君には鬼殺隊でいてほしかった。」
届かなかった大正時代の思いが今伝えられた。
また視界がぼやけたけど、泣きたくなかった。
「」
「はい」
それでも声は震えてしまった。
「空は青いままかい」
「はい」
私は笑った。
「何も変わっていません。私も、あなたも。」
大正時代に青空の下で話したことを思い出す。
どうして、空は青いのかと私は彼に聞いた。
どうしてだろう、と彼は答えた。
きっと今答えても、全く同じ答えが返ってくるのだろう。だって私たちは何も変わっていない。
だからこそ、こうしてまた巡り会えたのだろう。