第49章 ジハード
「私はタダでは負けません」
それこそ念押しのように繰り返した。
「どうしようって言うんだ」
宇髄先輩はふはっと息をもらして笑っていた。
「童磨くんと接触できるのは事件のタイミングしかありません。」
「そう言い切る理由は?」
「桜くんも優鈴も童磨くんが犯人だと気づいていたからです。天晴先輩と春風さんは、そもそも童磨くんと接点がないので気づかなくても不自然ではないですよね。」
「なるほど。犯人は現場に現れると?」
「そうです、そうです。」
「そこでとっ捕まえる気か?」
私は頷いた。
「現行犯なら、警察も逮捕できるし童磨くんも言い逃れできませんよね。」
「その状況でお前は自分を守れるのか。」
「……」
宇髄先輩が確信をついてくる。…やはり、そこが気になるのか。
「無理だと思います」
私は正直に答えた。
「あの頃のように動けるのなら良いのですが。今の私では思うように体を動かすことができません。動けたとしても全盛期とは程遠いですし。」
「だったら俺は反対だ。」
先輩は食い気味に口を挟んできた。その顔は真剣で、嘘とは思えなかった。
「これじゃあお前一人がまた突っ走ってるだけじゃねえか」
「…そうですね。けど…私一人じゃ、やっぱりダメなんです。」
私は妙に落ち着いていた。
「私一人では鬼を滅することができなかったように、きっと今回も難しい…。」
無惨の時は陽明くんの力もあってなんとかなった。
でも、あの子だって人間なんだ。どれだけ大人びていようと、高校生でしかない。
絶対的な力を持つあの子だって一人では鬼を止めることはできなかった。
「だから力を貸してほしいんです。」
一人では何もできない。仲間がいるからこそ、できることもあった。
この結論に至るまで随分と遠回しをしてしまった。けれど、これ以上の名案はきっとないのだろう。