第49章 ジハード
私はじっと二人の顔を見つめた。
「第一に、これ以上被害を増やしたくないから童磨くんを止めたい。…って言うことよりも、申し訳ないのですが、私は氷雨春風、安城天晴、桜ハカナ、木谷優鈴が被害にあった事故を童磨くんによるものだと立証したいのです。」
「まあ、当然そうなるわな。けどよぉ、警察が調べてもなんも出て来なかったんだぜ。理事長が仲介して警察に詳しく調査を依頼してくださったが、一切収穫はなしだ。」
「あ、それで美術館で逮捕できたのか!」
「今更知ったのかよ!!!」
あれは適当に彼を牽制するためだけに警察に通報したのだが、どうやら裏で手が回されていたらしい。
…どうりであんなにスムーズに。
「そうは言っても過去に起こってしまった事件はもうどうしようもありません。恐らく童磨くんは警察にも味方がいます。ですから、これから起こる事件で証拠を掴むんです。」
「はあ?そんなの、未来が見えてるわけでもないのに……」
そこまで言って先輩は固まった。
よほど実弥よりも察しが良いらしかった。
「え、マジ?」
「マジです」
私は真剣に親指を立てた。
「……木谷さんの…木谷さんの次、てか、そう。不死川が柱になって、そんで、カナエが、はあ、は、まあ…」
先輩は何を言っているのかわからないほど狼狽していた。
「次は自分が狙われるから、そのタイミングで証拠をつかもうってか!?」
「はい」
「いや、はいって。事故には童磨の面影もなかったんだ。お前の時も無駄に終わるに決まってる。」
「そうですね。面影もなかった。けれど、私はタダでは負けません。」
すっと人差し指を立てた。
「おいおい、嫌な予感してるの俺だけか?」
宇髄先輩は頭を抱えていた。
……これが彼の嫌な予感に当てはまらないといいけれど。
「彼のせいで怪我をした事実と証拠が欲しいんですから、まあ単純ですよね。」
「あー、やめだやめだ。勘弁してくれまじで。」
「いいよ。続けて。」
「理事長!!!」
宇髄先輩が何か言い出す前にすぐに答えた。
「私は普通に被害に遭います」
キッパリと言うと、先輩はまた頭を抱えた。
…あーあ。嫌な予感にクリティカルヒットしたみたい。しかもオーバーキルレベルで。