第6章 桜は散りて
笑い転げる私をよそに、実弥はずっとスケッチブックを見ていた。
そして、ピタリと手を止めた。
「これ」
そのページを覗くと、あの双子のようにそっくりな男性の似顔絵だった。
破いて切り離したものの、一応挟んでおいたんだ。
「ああ、何かね。急に思いついて手が動いたの。インスピレーションってやつ?格好いいよね。そういう人めっちゃタイプ。」
「………破るゥ。」
「待って待って待って。」
実弥が本気で力を込めるので、簡単に返してもらえなかった。
「………なあ、これもらっていいか。」
そういうのは、あの耳飾りをした人の似顔絵だった。
「え?やだよ。破くじゃんか。」
「破かねえよ。………ところで。」
実弥は似顔絵を私に向けて、耳飾りを指差した。
太陽のような模様の、花札のようなデザインだった。
「……お前、これどこかで見たことあんのか?」
「へ?」
そう言われて、私は首を傾げた。
「さあ…そう言われたら、あるような?ないような?はたまたその両方???」
「…そうか。それならいい。」
いいんだ。
意味わかんない。
「ねえ!!そんなことよりももっと聞いてほしい話あるんだけど!!!」
私が身を乗り出して言うと実弥はギョッとして身を引いた。
「聞いて聞いて!!話したくてたまらないの!!優鈴の話なんだけどね!!!」
「わかった!!わかったから落ち着けこの病人!!」
実弥は興奮する私を宥めながら話を聞いてくれた。