第48章 霞の女
「ねえ、よくわかんないけど落ち着いて?炭治郎くんが困ってるよ。」
彼の肩を軽くぽんぽん、と叩くと、男の子は素直に炭治郎くんからパッと離した。
「……ああ…」
「?」
「いい匂いがす」
最後まで言い終わらないうちに、彼の頭頂部に拳骨が落ちた。
「やめとけやめとけ。このお姉さんに手を出すと鬼より怖いやつが飛んでくるぞ。」
「うっ、宇髄先生…!」
「宇髄先輩」
同時に声を発し、男の子は驚いていた。現れた先輩はひらひらと私に手を振った。
「お前は風紀委員の仕事があるだろ。ほら、校内の見回りとっとと行きやがれ。」
「ええ〜お姉さ〜ん」
なぜかメソメソとついさっき会ったばかりの私に縋り付いてくるので、戸惑って変なことを言ってしまった。
「ええと……がんばれ?」
ぐっと親指を立てて言うと、彼は打って変わってにこーっと満面の笑みを浮かべた。
「うん!俺頑張る!!」
私と同じく親指をたて、颯爽と去っていく。
「……あ、思い出した。あの子善逸くんか。」
「今思い出したんですか?!」
「あ、あはは…まあ、私が一方的に知ってるだけだからね。」
なんだか懐かしい再会を果たし、なんとも言えない気持ちになった。…久しぶりの再会がこれで本当にいいのか?????
「竈門、お前も行った行った。」
宇髄先輩はニカっと笑って炭治郎くんの背中を押した。
「こっからは大人の話になるからな。」
怪しげにそんなことを言うので、炭治郎くんは首を傾げていた。私は調子のいい先輩に呆れつつ、案内されるがままに学園内を歩いた。