第48章 霞の女
珠世さん伝いに産屋敷へは連絡が入ったようだ。
産屋敷耀哉。元鬼殺隊の長にして現キメツ学園の長。
平日の真昼間ともなると、学園は生徒で溢れかえっていた。…お仕事中で忙しいだろうに、平日でよかったのだろうか。
ぼんやりと指定された来客用の玄関で待っていると、私の前を生徒たちがまばらに横切っていった。
……。
ちょっとおかしいなあ、と思うことがあるのだが……。
コソコソと壁に隠れて私を盗み見ている子がいるのだ。…姿は見えないが気配でわかる。ただ、悪い気配はしないし黙っているのだが…。
なんだかちょっと寒気のするような気配だ。…見慣れない学園の部外者がいるから戸惑っているのだろうか?
「あれ!さん?」
私がそちらに夢中になっていると、逆の方向から聞き慣れた声がした。
「わ、わあ、炭治郎くん!」
「こんにちは!学園に何か用ですか?俺、誰か呼んできましょうか?」
「あ、えーと」
その姿にホッとするのもつかの間、矢継ぎ早に質問をされて言葉に詰まってしまった。
しかし、私の声に被せるように別の声が廊下に響き渡った。
「ぎいいいいいいいいいやああああああああああ!!!!!」
「!?」
その断末魔に耳を塞ぎつつ、敵襲かと本気でそう思って周囲を警戒した。
…当然緊急事態でもなんでもなく、目の前に現れたのは金髪のおかっぱ頭の男の子だった。
「たんじろおおおおおおおおおお前ええええええええええ」
「ぜ、善逸!廊下で大きな声を出すのはいけないと思う!!」
「だああまああれえええええええ!!お前えええええ!!!」
金髪の男の子はユッサユッサと炭治郎くんの体を揺らし、親の仇を前にしてように叫び散らしていた。
「なんでこんな美女と知り合いなんだよ!!なんでお前だけ!!いいいやあああああああああああああああああああ!!!!!!」
「やめてくれ善逸!!そんなに揺らされると気持ち悪くなる!!」
目の前の惨劇に私は思わず見入ってしまったが、青い顔になる炭治郎くんを見て止めなければと男の子に手を伸ばした。