第48章 霞の女
目覚めたら目が濡れていた。
…夢。
お館様。ああ、情けないなあ。
夢の中でまであの人に心配をかけてしまった。
「」
まだ寝ぼけていて起き上がれなかったが、その声ははっきりと聞こえた。
「泣くな」
ほろほろと目から溢れる涙をぬぐってくれた。
「大丈夫」
「……」
「わかってるから、大丈夫だ」
グスッ、と鼻をすする。実弥はぽんぽんと頭を撫でて、背中をさすってくれた。いつも私が夜にするみたいに。
「ごめんな。…何も言わないのは、俺が言ったことをお前が気にすると思ったからだ。どうとも思ってないわけじゃない。」
「うん、うん…」
ぎゅうっと彼の腕にしがみついた。
「ねえ、私面倒くさい?」
「ああ。面倒くせェ。その質問自体面倒だ。」
「心狭い?」
「そうだなァ。すぐに拗ねる。」
実弥は微笑んだ。
「どんなも俺にとって大切だ。」
私はもう泣かなかった。
実弥がそう言ってくれるのが嬉しくて、ただただ笑った。