第48章 霞の女
自分の心の狭さが嫌になる。
海になりたいな。海になったらどんな言葉が聞こえてきても何にも思わない。
海になれないなら人形になりたいな。
なんて思っていたら目の前に海が見えた。ああ、海はいつでも綺麗だ。
『は人形ではないよ』
そして、隣には見慣れた男の子が。
おかっぱ頭で、その目は爛々と輝いて見えた。
『人形になるにはお転婆すぎる』
失礼なことを言われてもいらっとはしなかった。
ああ、そうか。この人は海なんだ。全部の言葉が波の音のように心地よく耳に入ってくる。
『お館様?』
彼は少年の姿でにこりと笑った。
『大丈夫。の心は綺麗だよ。怒ってしまってもいいじゃないか。誰が君を責められようか。』
……。
『一人になろうとしないで、考えてごらん。実弥が何を思っているのか。どうして何も言わなかったのか。』
『でも、私面倒ですから…』
『、自分が悪いと思いこんで、いざというときに一人になってしまうのはいけないよ。』
お館様は優しい声で続けた。
『私は君がたくさん話してくれると、私は嬉しい気持ちになった。ちゃんとは海でも人形でもなく、人間だから、実弥と話をしてごらん。』
『……』
『実弥と一緒にいると決めたのだろう?』
私は頷いた。
お館様は海を最後に満面の笑顔を浮かべていた。
私はその優しい笑顔に、ポロポロと涙を流した。