第48章 霞の女
続いてぷくっと頬を膨らませる。実弥は私の機嫌が悪くなったことにここでようやく気付いたようだった。
「……なんだよ」
「いいえ」
「あ?言えよ」
「面倒な女なので言いません」
むすっとしていると実弥はさりげなく自分の分の和菓子を私のお皿に置いた。………いえいえ、そんなものでは私の心は動きません。
「……何が嫌なんだよ」
「…だって」
私はブスッとしたままボソボソと話した。
「実弥が隠し事なしって言うから言ったのに結局何も言わないなら言わなくたっていいじゃん」
……。
改めて文章にすると自分が何言ってるのかマジで意味わからねえな。
うう、でも嫌だなって思ったのは本当なんだもん。実弥が言えって言ったから。否定の言葉なんて受け付けていないので。
「……ああ、絵の締め切りが〜…」
私は適当なことを言ってさっさとリビングを後にした。
『私悪くない私悪くない私悪くない…実弥も悪くない』
と、心の中で何回か繰り返してからベッドに寝転んで布団を頭からかぶった。
起きていたら変なことを考えてしまいそうだから、いっそ寝ることにした。
最近寝不足だったからかすぐに眠ることができた。