第48章 霞の女
これで産屋敷がどう動くか。…それはわからない。
ただ、権力を持っていることは確かだ。どうにかして童磨くんをおさえ込む力になってくれれば良いのだが。
一つ不安なことは童磨くんがいつ外に出てくるのかがわからないと言うことだ。そのタイミング次第では私もうまく動けない。
陽明くんと巌勝も動いている。
みんな、動いてくれている。
……ここはやらなくてはいけない。
私だって、そろそろ動かなくてはならない。
「おい」
そんなことを考えていると、実弥が部屋の外から声をかけてきた。
「もう仕事はやめろ。…茶菓子用意したから、食いたきゃ食えよ。」
ぶっきらぼうな声がした。私は一人でクスリと笑って、外に出た。オーバーワークにならないように心配してくれているようだ。どうしてこの子はこんなに優しいのだろう。…私にはない優しさだ。
部屋のドアを開けると、実弥はもういなかった。
リビングに顔を出すとテーブルの上に和菓子とお茶の入った湯呑みが用意されていた。
実弥はというと一人でソファーに座っていた。
「一緒に食べようよ」
そう言って初めて気まずそうに私の正面に座る。
「どんな状況であれ、湯呑みを持つとホッとするよね。」
「そうかい。」
「ありがとう。」
「別に。」
そうは言っても、実弥もどこか嬉しそうな顔をする。
……。
「私、近いうちに学園長に会いに行く。」
「あ?」
私は今やろうとしていることを実弥に打ち明けた。
「…伝えておかないといけないことがある。私が生きている時に、言えなかったこと。」
実弥はじっと何かを考えているようだった。
「あの人との付き合いはお前の方が長い。何も言わねえよ。」
「……。」
「あ?んだよその顔。」
私は遠い目で虚空を見つめた。