第48章 霞の女
私は仕事で絵を描くかたわら、一つ一つ問題を潰していった。
まずは失われた私の信用回復から……。
『黙れ醜女のゴミクズ。お前は珠世様を悲しませた。』
もしもし、という言葉もなしに、電話の向こうからは心にグサグサ刺さる言葉が聞こえてきた。
醜女て。そんな独特のボキャブラリー使わないでくれ。
「まことに申し訳ございませんでした…愈史郎さん」
『あれからどれだけの時間が過ぎたと思っている。全くお前は阿呆だ。馬鹿だ。』
「はいその通りです」
何も否定できず、はははと苦笑した。もう笑うしかねえ。
一緒に無惨のことを調査していたのに、勝手に一人先走って誘拐されて…。愈史郎さんはその間動いてくれていたと言うのに、今の今まで全然連絡を取っていなかったのだ。
『ひとまず、俺に謝れるほどお前が元気になったと言うことはわかったよ。』
「……愈史郎さん。」
『今も何か面倒ごとに首を突っ込んでいるんだろう。世間は何やら騒いでいるしな。できる範囲で手は貸してやる。』
優しい言葉が胸に染み渡っていく。…そうだ。なんだかんだ言っても、いつも一緒にいてくれた。私に歩み寄ってくれた。
珠世さんがいなくなって、悲しい思いをしている時にも私のことを気にかけてくれた。…一緒に行こうと言ってくれた。
愈史郎さんと珠世さんとの思い出だって、鬼殺隊のみんなと過ごした時間と同じくらい儚くて大切なものだった。
「ありがとう…。」
『礼は良い。それで、今起きていることを話せ。念のため珠世様にも伝えておく。あのお方を経由して、産屋敷にも報せが行くだろう。』
「…ええ。ひとまず、今起きていることを……。」
私は一連の事故のことから童磨くんのこと、そして私の現状を話した。…ちなみに、陽明くんと巌勝とコソコソ話していた作戦については秘密にしてある。
知っている人間は少ない方がいいからだ。
『…なるほどな。あの胡散臭い童磨か。』
「そう。おかげでてんやわんや。怪我をした人たちは誰も死んでいないけど、これからはわからない。」
『わかった。アイツが捕まっている今が絶好の好機というわけだな。全て伝えておこう。』
愈史郎さんとはそれから事件のことを詳しく話したり、しばらく話してから電話を終わらせた。