第47章 大正時代にお薬どうぞ
最後はすっかり大人しくなって、胡蝶さんが包帯を巻いてくれた。これで治療は終了です。
「うん。これでいいわ。あまり動かしちゃダメよ。」
「……ああ。」
プイッと顔を逸らしてしまう不死川くん。その様子にしのぶがムッとしたように顔を顰めた。
「せめて今日1日は安静にしてね。」
「ああ。」
短い単語しか発しないが、ちゃんと話は聞いているようだった。…そろそろここを発たないと任務に支障が出ると思い、不死川くんのそばに薬の入った瓶をことりと置いて立ち上がった。
「行かれるのですか?」
「ええ。お世話になりました。」
「あの、今日は私何もないんです…そ、その、任務に同行させてもらっても…」
しのぶがアセアセと言葉を詰まらせながら聞いてくる。特に断る理由もなかったので、私は頷いた。
「なら、準備をしておいで。しのぶが来るまで待っていますよ。」
「すっ、すぐに行きます!!」
嬉しそうに屋敷の中に入っていく。…本部に報告すべきことが増えてしまいましたが、まあいいでしょう。
「しのぶったら…すみません。」
「構いませんよ。」
…そんなに任務に行きたのでしょうか。じゃあ見せ場は譲ってあげないといけないですねえ。しっかり支えなければ。
「それにしても、霧雨さんのあの薬はどうやって使うのですか?どこかお怪我でも…。」
「古傷の具合が悪いので。」
「まあ…。今から診ましょうか?」
「いえ、いいのですよ。」
私はにこりと笑った。
そして、その横でそっぽを向いている不死川くんの頭を2、3度撫でた。
「っ!」
睨まれつつも、最後にポンポンと軽く頭を叩いた。
「いくらお相手が優しくても、照れかくしばかりしていると…嫌われてしまいますよ?」
「あァ!?」
「ふふっ。応援してますよ。」
「何なんだよ!?!?」
激昂する彼をよそに背を向けた。やはり、彼の気配から感じた通り…もしかしたらもしかするらしい。
あぁ、初でかわいらしい。
…さあ、休憩は終わり。これからは切り替えなくては。
どこか寒くなるような空気をまとい、慌ただしく駆け足で後ろをついてくるしのぶと一緒に任務に向かった。