第47章 大正時代にお薬どうぞ

私はその反応にため息を付いた。どうも私の言葉は響かないらしい。

行冥の言うことはみんな聞くのですが…。今度コツでも教わりましょう。


「じゃあ、私も休みますから一緒にここで療養しましょうか。」


何を言っても無駄だろうし、私はなるべく穏やかにそう言った。まだ夜まで時間がある。ゆっくりしていても問題はないでしょう。



「はァ？」

「胡蝶さん、ここに書かれている薬を調合していただけますか。」


私は小さな紙を彼女に手渡した。


「難しいものではないと聞いています。いつもは近所の薬師の方に頼んでいるのですが、今は休業中で…手に入らなくて困っているのです。」

「まあ…これならすぐにできます。」


胡蝶さんは優しく微笑んだ。


「では不死川くんとゆっくりしていてください。しのぶ、手伝ってちょうだい。」

「わかったわ、姉さん」


姉妹が奥に引っ込んだところで、私は縁側に腰かけた。不死川すんも隣に座った。

どうやら私が動かなければ今の状況がどうにもならないことを悟ったらしい。


「怪我はちゃんと治した方がいいですよ」


私は彼を見ずに言った。


「死んでしまいます」


不死川くんは不快そうに鼻をならした。


「大袈裟だ。あんたも、胡蝶も。」

「……いつもと歩幅が違います」

「あ？」

「…感情にもブレがあります。怪我で鈍っているのです。」


私は彼に向き合った。


「一般人を庇って負傷したと聞いています。」

「だからなんだよ。」

「逃がした鬼が気になるのですか？」

「当たり前だ。……俺は絶対にあの鬼を斬らなきゃいけねェんすよ。」


不死川くんは無意識なのか手を握りしめていた。


「私は……ッ！！」


その様子に私もぎゅっと拳を握りしめました。


________私の方が、悔しい思いをしています


ついそう言ってしまいそうになり、ぐっと唇を噛んだ。

急に黙り込む私に彼は眉を潜めていた。