第47章 大正時代にお薬どうぞ
「うおっ」
私に気づかなかったようで、彼は悲鳴をあげて立ち止まった。そして急な活動停止に耐えられず、彼は前のめりに倒れた。
ぽふん、とそんな音を立てて私は受け止めた。
「捕獲で~す」
「霧雨さん!?」
そんな私の登場に胡蝶姉妹は驚いていた。
不死川くんは私の胸に顔が埋まったままぴくりともうごかなかった。
「こんにちは」
「あ…そうだ、午後からいらっしゃると連絡いただいてましたね。お出迎えできずにすみません…」
「かまいません。…お忙しいみたいですし、また出直します。」
私はそこで不死川くんから手を離した。とたんに彼は勢いよく私からはなれ、真っ赤な顔で口をパクパクとさせていた。
「それでは。不死川くん、お大事に。」
「っ!ちょ、ちょっと待て!」
そのまま帰ろうとしたが、不死川くんに止められた。私の前に躍り出て、まるで仇でもにらむように眼光を光らせた。相変わらず真っ赤な顔で。
「霧雨さん、あんたに俺の任務まわってきてただろ」
「ええ、その前に調子を整えようと思いまして…」
「俺が引き続き任務にあたる。本部にそう報告しといてくれ。」
「そうですか。」
私はにこりと笑った。
「霧雨さん、不死川くんの怪我は本当にひどいんです…任務になんて到底行かせられません。」
「これくらいどうってことはない。」
胡蝶さんの主張も平気ではねのけた。
不死川くんはそう言いつつも不調なようだった。
……胡蝶姉妹の期待を含んだこの感じ。まさか、私に止めろと?
「…そうは言っても、その任務は私が行く事になりました。今から本部に言いに行ってもどうしようもありませんよ。」
「…!!!」
彼はギリギリと歯を食いしばった。