第47章 大正時代にお薬どうぞ
その日、私は蝶屋敷に来ていました。
「胡蝶さんに用があるのですが。お邪魔してもよろしいですか?」
「はい、今ご案内しますね。霞柱様。」
小さな女の子たちに出迎えられ、私は屋敷に足を踏み入れた。
女の子たちと屋敷内を歩いていると、診療室から慌ただしい音が聞こえてきた。
「待って、不死川くん。」
「そうですよ!話の途中なんですよ!!」
「うるせェ!!俺に触んな!!」
…おやおや、不穏な声ですねえ。
そちらに顔を向けると、怒った不死川くんと彼を追いかける困り顔の胡蝶姉妹が見えた。
大声を出す三人に私を案内してくれていた女の子たちはギョッとしていた。
「だめよ、ちゃんと治療しないと!」
「俺には必要ねえ!!」
「その怪我では次の任務には行けないわよ、さっきも言った通り、お館様にも手紙を送ったし…」
「だからそれを取り消しに行くんだよ!!邪魔だお前ら!!!」
………。
私は女の子たちを連れてコソコソと三人の死角に入りました。こんななか話に割って入るほどバカではありません。
「その任務は霧雨さんが受け継いだわ。だから大丈夫よ。ね?」
「…お前にどうこう言われることじゃねえ。」
うん。そう言うことなので隠れたんですよね。三人の女の子たちは怖がりつつも、怖いもの見たさで物陰から顔を出して盗み見していた。止めようかと思ったが、変に動いてバレたくはない。
私は息を潜めました。
「あれは俺の任務だ!あの鬼は俺が斬る!!」
「いい加減にしてください、不死川さん。実際そんな大怪我しているじゃないですか。」
「だからうるせえんだよ!!そこにいる奴らもさっさと退け!!」
あ、女の子たちが見つかった。不死川くんは構わずずんずんと進む。
「待って、不死川くん!」
その制止も聞かないようだ。放っておこうかと思ったが、不死川くんの歩幅がいつもと違うことに気づいた。
感情も揺らいでいて乱れている。……けがのせいで具合が悪いらしい。
私はスタスタと歩き、角を曲がる不死川くんの前に立った。