第46章 お薬どうぞ
実弥はソファーに座って薬を塗り出した。
けど…。
どう見たって適当だしむらのあるぬり方。…なんかこう、見ていてイライラする!!!ちゃんとぬらないと治んないでしょうよ〜!!!
と思いつつも実弥が顔にペタペタと薬をぬる様子を眺めた。……うん。やっぱり適当にやってる。
「何じろじろ見てんだよ」
実弥が不服そうにそう言ったところで、私はガタンと立ち上がった。
「貸せ」
「あ?」
「いいから!!」
実弥から薬のチューブを奪い取り、私は実弥の顔に薬をぬりたくった。
「なっ、何すんだよ!?」
「見ていて気になるんだもん!何よあの雑なぬり方!!やる気あんの!?気合あんの!?」
「薬ぬってるだけだろうが!!!」
嫌がって逃げようとする実弥に負けじと薬をぬる。ほら。おでこのところ、むらになってる。こんなんじゃ薬ぬる意味ないじゃん。
腕にもペタペタぬりだしたところで、実弥は反抗せずに大人しくなった。
「あせもみたいになってる…。薬ぬるのサボってたでしょ〜。」
「…いちいち面倒なんだよ。どうせ何やっても消えねえし。」
少しばかり悲しい気配がした。
小学校の時に事故にあってしまって、鬼殺隊の頃と変わらぬ傷が体中にある。いろんな目で見られたこともある。私はそんな彼を見てきた。
…そりゃ、消えて欲しいよね。傷が戦いの勲章だとか嘘ばかりだ。傷を見るたびに思い出してしまうだろうね。
私も自分の体の痣を見るたびに悲しくなる。けど、今はそんな世界じゃないはずなんだ。
傷が消えない。死ぬまで消えない。
でも、なんだか、実弥が傷を蔑ろにするのは自分で自分を傷つけているように見えて嫌だったんだ。
「いいよ。私がお薬ぬってあげる。」
「……」
ムキになってそう言う。私と比べても太くて大きな手に必死になって薬を揉み込んでいると、実弥が軽く寄りかかってきた。
本当に軽くだし、全然重くもないから無意識なのかもしれない。
それでもなんというか…。
私に擦り寄ってくる時のおはぎと同じ気配だし、甘えられているようでどれだけ耐えても私の頬は緩んでしまった。