第46章 お薬どうぞ
散々騒いだ後にようやく家路に着いた。いやあ、まさかだよな。
まさかこの状況で同棲していた場所に戻るとは!!!!!
巌勝とエントランス前で別れ、実弥と二人でエレベーターに乗り込む。いや話題無ーーーーーー。
とりあえず、玄関開けて言うことは一つだけだ。玄関のドアを開けたら発言権は私がいただく。よーし今のうちに息すっとこう。肺活量なめないでね。呼吸使っちゃうぞっ!
と、実弥が鍵を捻ってドアを開け、バタンと閉めたところで私は声を出した。
「ごめん!」
「悪かった」
二人でハモリ、ギョッとする。実弥は『こいつ何に謝ってんだ!?』と驚き、私も同じ理由で驚いていた。
無言で固まる主人を前に、おはぎはにゃあと一度だけ鳴いた。
「いや、童磨くんの策略とは知らずに散々酷いことを言ったことを…」
「…俺は、その、やっぱりその時のことを」
「「え?」」
私たちはとりあえず玄関から移動し、リビングのテーブルに腰掛けた。
「その…ですね?童磨くんが…仕組んだこととはいえ、全部決めつけて散々酷いこと言ったのを…」
「俺はお前を不安にさせたこと、改めて謝らないとって思って…」
「………え?その件に関して実弥は悪くないと立証されましたが??」
「はあ?お前が傷ついたことに変わりはないだろうが。」
…ん?
待って。私たちすれ違ってない?
そう思うと同時に、なんだかおかしくなって吹き出してしまった。実弥はふはっと笑い出した。
「もう、謝ってるのに」
「俺だってなあ…道中ずっと謝罪文考えてたわ。ていうか、ここ数日ずっと…。」
実弥はよく見るとげっそりしていた。
「えっ。待って。そういえばこのテーブルに置いてある大量の紙って……」
「謝罪文をパソコンで打ち込んで刷った」
「はっ!?」
よくよく見るとつらつらと私への謝罪が。
…いや律儀で几帳面なところがあるなあと思っていたけれど、まさかここまでとは。
ちょっとした狂気さえ感じる。
「『もう二度と他の女性に魅力を感じません。目も見ません。近づきません。』……って、これ生きていけなくない?大丈夫?」
「頭で考えても落ち着かねえから、文字にして…完璧な文章作ったつもりが、もう吹っ飛んじまった。」
実弥は力が抜けたみたいにふにゃりと笑った
…そんなに気にしてくれてたんだ。