第46章 お薬どうぞ
その後、私は実弥と同棲していた家に帰ることになった。ただ、アリスちゃんが一度入っていたから何か仕込まれているのではないかと焦ったが、あの家には陽明くん曰く何もないらしい。
「じゃあ、何かやばいと思ったらひとまず神社に逃げて来てください。二人の家の様子は巌勝さんには見張っててもらいますから、変な気配がしたら俺から連絡しますね。」
「じゃあ私の連絡先教えておくね!」
「必要ありません。わかるんで!」
個人情報もクソもねえなあおい。でも便利で羨ましいかも…。
「てか、巌勝が見張るっていうのは…」
「二人が家に帰ることはわかっていたので、もとよりそう言う予定でした。とりあえずここにきてもらったのは、俺と話して巌勝さんのことを信頼してもらうためです。」
「なるほど…」
確かに、陽明くんが信頼できると言うなら説得力がある。
チラリと実弥の横顔を盗み見たが、全く納得していないようだった。…けど文句ひとつ言わないな。
私と話したことを律儀に守ってくれているのはとてもありがたいけれど……このまま我慢してもらうのもよくないかも。
けど…。
「不死川先生もそれで良いですね?」
「ああ。構わねェ。」
無理やり自分を納得させたようだった。
「じゃあひとまず解散ですね。巌勝さん、これからのことはお願いします。密に連絡とっていきましょう。」
「ああ。…今度は授業中に電話をかけないように配慮する」
「そ、それ言っちゃいかんやつ…」
「ほォ?」
陽明くんはビクッと肩を揺らした。…血管を浮かび上がらせて拳をぼきぼき言わせている実弥を見て、一気に青ざめていった。
「この前、俺の授業で携帯鳴らしたやつはお前だったのかァ…?」
「ちっ、違うんです!これは違うんですう!!あの時、結局犯人は見つからなかったじゃないですか!終わった事件じゃないですか!!」
「うるせえェ!補修の課題追加だ!全問正解するまで帰さねえからな!!」
「う、うわああああああああ!!」
実弥はボールのように陽明くんをぶん投げた。予知はできていたのだろうが、言っていた通り物理的な力のない陽明くんは派手に飛んでいった。
そして大きな木の枝に服が引っかかり、宙吊りになってしまった。
その後、背の高い巌勝がなんとか助けだし、実弥は顔を真っ赤にしてやりすぎたと反省していた。