第46章 お薬どうぞ
そりゃまたとない好条件だけど…。
いまいち納得できない。どうしてここまで至れり尽くせりなんだろうか。ていうか、神社に避難っていつまで?
童磨くんはコネや権力を駆使してそのうち刑務所から出てくるだろうし…。あまり悠長なこともしてられない。
「ああ、最終局面って感じだね。判断は二人に任せるよ。帰りたいなら帰ってどうぞ。巌勝さんに送ってもらうし。」
「え?帰っていいの?」
「良いけど、二人が面倒くさいことになってるみたいだからさんだけここに残れば?って提案してるの。あとさあ、あの…アリスって人は二人のお家わかっちゃってるじゃん?だから、不安かなって。」
そう言われて私と実弥は顔を見合わせた。
……。
「私は…」
「うん?」
……一人になりたかっただけなのに…
大きくため息をついた。
それだけでどうしてここまで大袈裟なことになるのだろうか。なんかもう、ことの始まりである実弥の前世の奥さんも仕組まれていたような気さえするわ…。
「そうだよ」
陽明くんが急に声を出した。
勝手に一人でそんなことを言い出したので、巌勝と実弥が首を傾げていた。
「不死川先生の前世の奥さん、偶然を装って童磨が先生と引き合わせたんだよ」
「………は?」
これに反応したのは実弥だった。
「そして、たまたまさんがその場に居合わせるようにセッティングまでした。あまりにも自然的で気づかなかっただろうけど、童磨は計算していたんだ。」
陽明くんは淡々と話した。
「流石にそろそろやばいと思って、俺が巌勝さんを雇ったの。……もっと早く動けたらよかったんだけど…俺も俺で色々あってさ。」
「…数学の補修とかな。」
「授業サボったのは今日のためなんだよー!!大義名分!!お願いだから成績これ以上下げないでね…!?」
冗談混じりで実弥は言っていたが、ふつふつと怒りが込み上げているのを感じる。
…彼に理性がなかったら、きっと森が全壊しているだろうなあ。