第46章 お薬どうぞ
3時間半、地獄のドライブを終えてようやく車から降りることができた。げっそりした私の背中を実弥が優しくさすってくれた。
「で…ここはどこよ!!!」
私は思わず大きく叫んだ。
連れてこられたのは樹海。森。木しかないところ。
加えて今は真夜中ときた。真っ暗な樹海の中で放り出されたら恐怖しかない。巌勝は私のスーツケースを車からおろしてどこかへ電話をかけていた。
最初は車の中で見覚えのある道を通ってるなあ、と思っていた。しかし、気持ち悪くて座席に寝転んで唸っている間に全く知らない場所に連れて来られていた。
実弥も心当たりがないようで、あたりをキョロキョロと見渡しいた。
「シーっ。だめですよ、大きな声出しちゃ。」
すると、急に後ろから声がして慌てて振り返る。気配も何も感じなかった…!!
と、最初こそ驚いてはいたがその姿を見て恐怖は消えていった。そこにいたのは懐中電灯を持った陽明くんだった。陽明くんが照らしてくれたおかげで当たりが見えるようになった。
「よ、陽明くん…!!…ってことは、ここは神社の…。」
「そう。敷地内にある鎮守の森です。」
……なんだ、全然知ってる場所だったんだ…
その事実にもまた安心した。
「ていうか珍しいですねえ。あなたがわざわざ神社に来るなんて。」
「ふん。私はこの神社で捌かれる身であるからな。」
「ま、それは今生の行い次第ですね。ガンバ!」
懐中電灯を振り回しておちゃらける陽明くんに巌勝は呆れ顔だった。…うん。まあ、陽明くんってそういう子だから。
でもすごく頼りになる子でもあるんだよね。
「おい霞守、どういうことだ?ていうか、ガキが夜中にうろついてるんじゃねえよ。家にいろ。」
「嫌だなあせんせ、ここ俺ん家だよ??」
「建物の中にいろって言ってんだよ。」
「んも〜。俺の正体知っていまだに子供扱いするの、不死川先生くらいだよ〜。」
陽明くんはそう言いつつも、嬉しそうに笑うのだった。