第45章 傷が消えるまで生き抜いてー過去の記憶ー
「だーーーーーーー!!こんなところにいた!!」
おにぎりをもぐもぐと食べていたら山全体に響くような声が聞こえた。なんとなくくるのはわかっていた。
「安城殿」
「ちょっとは驚きなさい!!」
「…少々お待ちください。」
驚くことは、安城殿と過ごすうちに覚えた。
「…うわっ」
いつもより高い声で言うと、安城殿は頭を抱えていた。
「それはさておき…!!もうこれ以上ガマンならないわ!!ガツンと言ってやる!!」
「どこに行かれるのですか」
「黙ってついてきなさい!」
「はい、私、ついてきのです」
「正しくは『私ついていくのです』!!!」
「私ついていくのです」
ついてこいと言ったものの、安城殿がずっと腕を引っ張っていたのでついて行かずとも目的地まではあっという間に到着した。
道中、何泊か宿に泊まった。お風呂も入ってご飯も食べて、なんだか…ホワホワした。
綺麗に身なりを整え、私がやってきた場所は…。
初めて安城殿に会ったあの場所だった。
布に包まれてなにも分からなかったが、随分と広い場所だと言うことがわかった。
安城殿と二人で庭にポツンと立っていると、彼がスウッと音を立てて激しく息を吸い込んで……。
「おいお館様ッ!!!さっさと出てこいッ!!!!!出てこないなら暴れるぞ!!!!!」
ビリビリビリビリビリ
様とかつけといて、まるでやっていることは脅しだ。
視界が小刻みに震えた気がした。あまりの声量に驚き、その場から後ろに飛び退いてしまった。耳がどうにかなるかと思った。
そんな私に構うことなく安城殿は毅然とした態度を変えなかった。
「お、お館様はすぐにいらっしゃいます!大きな声を出すのはおやめください、鳴柱様ッ!!」
「黙って!!あんたらもそんなところで突っ立ってんならお館様を引きずってでも連れてきなさいッ!!!!!」
「ヒ、ヒイイイイイ」
そばにいた隠の人たちは今にも泣いてしまいそうだった。
安城殿の視界に入っていることさえもまずいと思ったのだろう。すぐに下がってしまった。