第45章 傷が消えるまで生き抜いてー過去の記憶ー
そうか。一介がいないと任務の報せも来ないのか。
そんなことに気づいたのはあれから三日ほど経ってからだった。なんでか知らないけれど、鬼のいる場所はわかるのでその方向へその方向へと歩いているうちに全く違う場所に来てしまっていた。
斬った鬼の数なんて数えていない。毎晩毎晩、鬼は尽きることがなかった。…鬼の滅殺とか本当にできるんだろうか。
いつも通り山にこもって木の実をもぐもぐ食べていると、誰かの気配がした。
「子供がここでなにをしてるんだ」
ばったりと人に会った。
「行くところがないのか?孤児か?」
「…コジ?」
知らない言葉だった。
「父親は?母親は?兄弟は?」
早口でそう聞かれて、私はポカンとしてしまった。
「家族は?」
家族?
_____________記憶の中に、そんな人たちがいる気がする。
お父様、お母様、お兄様たち。お母様は私を捨てたし、お兄様たちは顔すら覚えていない。お父様は____。
「…ここ最近、女の子が放浪していると言う人がいてな。キミのことかな。」
「………」
首を傾げた。この人はなにを言っているんだろうか。
「ここでなにしてるの。どうして刀なんて持っているんだ?」
「…?」
ポカンとしてその人を見ていた。その人はなにも言わない私に顔をしかめた。
「…じゃ、じゃあ、…もう行くから、暗くなる前に山を降りるんだよ。これ食べな。」
そして、困り果てたようにそう言った。何かの入った包みを私にくれた。こっそり中身を覗き見ると、中にはおにぎりが三つ入っていた。
「ありがとうございます」
安城殿に教わった通りに言った。
煉獄殿の屋敷でもおにぎりをもらった後にこの言葉を言ったことを覚えていたので、そう言った。
男の人はもうだいぶ遠くにいたが、聞こえたのか立ち止まって振り返った。ペコリとお辞儀をして、そのまま歩いて行った。
私は久しぶりにお米を食べた。